ロコモとは?
「locomo:ロコモ」は運動器、機関車の意味で、「locomotive:ロコモティブ」は、移動する能力があることを意味します。
日本整形外科学会では、運動器の障害によって、移動機能が低下している状態を「locomotive syndrome:ロコモティブシンドローム」(ロコモ、運動器症候群)と呼ぶことを提唱し、認知されるようになってきています。
人間が立つ、歩く、作業するといった、広い意味での運動のために必要な身体の仕組み全体を運動器といいます。
運動器は骨・関節・筋肉・神経などで構成されています。
運動器の障害によって立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態が、ロコモです。
ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。
ロコモは要介護への入り口
ロコモは、加齢に伴う筋力の低下や関節、脊椎の病気、骨粗鬆症などにより運動器の機能が衰えて要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクが高い状態を表す言葉であり、フレイル、サルコペニアとも深く関係します。
要介護、要支援の原因として、関節疾患、転倒による骨折などの運動器疾患が約5人に1人、特に要支援では運動器障害が全体の30%以上を占めていると報告されており、ロコモは要介護への入り口とも言えるでしょう。
なお、ロコモは、早い方であれば40歳頃から始まると言われています。
原因
- ①加齢による筋量低下(サルコペニア)やバランスの能力低下などによる運動器機能不全
- ②運動器疾患(変形性膝関節症・変形性脊椎症などの関節・脊椎疾患、骨粗鬆症 など)
上記の①②によって、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板などの障害が原因で歩く、座るといった基本的な日常生活動作がままならない状態になっていきます。
加齢に伴う運動器の機能低下
加齢により、立つ、座る、歩く、走るなどの移動機能を支えている筋肉や骨の量が低下していきます。
骨格筋量の低下
筋肉量は基礎代謝量の低下に比例し、男性は15~17歳、女性は12~14歳頃がピークで以降は低下します。
筋肉量のピークは10代と考えられています。
骨量の低下
骨量のピークは20~30代であり、以降は低下していきます。
ロコモをきたす運動器疾患の代表疾患
- 変形性膝関節症:約2530万人
- 変形性腰椎症:約3790万人(腰部脊柱管狭窄症を含めるとさらに増加します。)
- 骨粗鬆症:約1300万人
- その他:関節リウマチ、骨折、腰痛、四肢・体幹の麻痺、肩こりなどがあります。
参考:ロコモとメタボの関係
高血圧は約3970万人、糖尿病は約820万人、脂質異常は約1410万人と報告されており、男性はメタボに注意、女性はロコモに注意とも言われています。
ロコモ予防はメタボ予防にも繋がります
日本のメタボ該当者は960万人、予備軍まで入れると1940万人と推定されており、40~74歳の男性の2人に1人、女性の5人に1人が相当します。
メタボになると動脈硬化が促進され、心筋梗塞、脳梗塞などの命に関わる病気を発症するリスクが高くなるうえ、肥満によって膝や腰への負担が大きくなり、ロコモの原因ともなります。
逆に、極端なダイエットや低栄養で痩せすぎていても骨粗鬆症やサルコペニアとなり、ロコモへと繋がります。
ロコモ予防はメタボ予防にも繋がります。
症状
立位・歩行機能やバランス機能、巧緻性、運動速度、反応時間、深部感覚などが低下し、屋内外での移動、トイレ・更衣・入浴・洗面などの日常生活活動が大変になり、介助が必要な状態となっていきます。
身体が思うように動かないことで外出するのが億劫となり、家に閉じこもりがちになると運動の機会が減り、さらに運動器の機能低下が進みます。
移動能力の低下から容易に転倒しやすくなり、怪我や骨折のリスクも高くなります。
フレイルやサルコペニアと同様で、日常生活に介助が必要な要支援・要介護状態になると、自分で思うように動けないため、外出することが億劫になり、気分も落ち込んで家に閉じこもりがちになります。
結果として、意欲や活動量がさらに低下し、運動機能の低下が加速することにつながってしまいます。
つまり、フレイル、サルコペニア、ロコモの悪循環となります。
ロコチェックでセルフチェック
- 以前にも増して体の衰えを感じるようになった
- 普通に歩いているだけなのにつまずきやすくなっている
など、ロコモの可能性を感じているという方は、まずはロコチェックしてみましょう。
ロコチェック
以下の7項目のうち、1つでも該当する項目があれば、ロコモの可能性があります。
- ①片脚立ちで靴下が履けない
- ②家の中でつまづいたり滑ったりする
- ③階段を上るのに手すりが必要である
- ④家の中のやや重たい仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
- ⑤15分くらい続けて歩けない
- ⑥2kg程度の買い物(1Lの牛乳パック2本程度)をして持ち帰るのが困難
- ⑦横断歩道を青信号で渡りきれない
自覚症状がなくても注意
自転車、自動車、エレベーター、エスカレーターなど、便利な移動手段が一般的に使用可能な現代社会では、日常生活に支障はないと思っていても、ロコモになっていたり、すでに進行したりしている場合が多くあることが分かっています。
また、高血圧など生活習慣病のある人は比較的若い頃からロコモの原因となる病気にかかりやすいことも分かってきました。
定期的にロコチェックしてみましょう。
診断
ロコチェックでロコモの可能性がある場合にはロコモ度もチェックしてみましょう。
ロコモ度テスト
ロコモ度テストで移動機能の状態を確認してみましょう。
立ち上がりテスト(垂直方向への移動)
下肢の筋力を調べるテストです。
両脚、または片脚で10〜40cmの台から立ち上がれるかをチェックします。
2ステップテスト(水平方向への移動)
歩幅から、下肢筋力、バランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を総合的に評価するテストです。
2歩幅÷身長で計算します。
歩幅は歩行速度に密接に関係しており、歩幅の減少は歩行速度の低下を意味しています。
ロコモ25
1ヶ月間に身体の痛みや日常生活で困難なことがあったかを25項目の質問表でチェックします。
結果
これらの結果からロコモ度1~3を判定します。
- ロコモ度1:移動機能の低下が始まっている状態
- ロコモ度2:移動機能の低下が進行している状態
- ロコモ度3:移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態
2020年9月からロコモ度3が新設されました。
整形外科疾患が原因でロコモ度3と診断された場合、手術などの積極的加療を行うことでロコモ度2まで改善する可能性があると報告されています。
具体的には?
立ち上がりテスト
- ロコモ度1:片脚で40cm台から立ち上がれないが、両脚で20cm台から立ち上がれる
- ロコモ度2:両脚で20cm台から立ち上がれないが、30cm台から立ち上がれる
- ロコモ度3:両脚で30cm台から立ち上がれない
2ステップテスト
- ロコモ度1:1.3未満
- ロコモ度2:1.1未満
- ロコモ度3:0.9未満
ロコモ25
- ロコモ度1:7点以上
- ロコモ度2:16点以上
- ロコモ度3:24点以上
治療
活動的な生活、運動する習慣、適切な栄養摂取、運動器疾患の予防と治療が大切です。
下記に該当する場合は、整形外科に受診し、基礎疾患のチェック、適切な治療を受けましょう。
- ロコチェックで痛みが出る場合
- 運動器の衰えに不安を感じている場合
- ロコモ度テストでロコモ度2以上であった場合
運動器の機能は、加齢や環境の変化などの影響を受けるため、定期的にセルフチェックを行って、自分の状態を客観的に捉え、気になる症状があった場合は早めに受診して対策しましょう。
ロコモをきたす運動器疾患の治療
変形性膝関節症、変形脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症などが原因で運動療法が困難な場合、投薬、リハビリテーションで保存的に治療を並行して行うことが大切です。
保存的治療に抵抗性の場合、手術などの積極的治療を提案させていただくこともあります。
術後にロコモ度が3→2となり、積極的な運動療法が開始できるケースもあります。
運動療法
- 20歳の運動習慣のない女性と45歳で週3回以上運動する女性は同レベルの運動能力
- 65歳の運動習慣のない女性と75歳で週3回以上運動する女性も同レベルの運動能力
と報告されています。
一般的にはスクワット、ランジなどの運動がおすすめされますが、個人にとって適切な運動は運動器疾患、骨粗鬆症が基礎疾患にあるかどうかでも変わります。
膝、腰に強い痛みがあるのに積極的な歩行訓練、スクワットなどは無理ですよね?
当院では医師、リハビリテーション担当から個人に適した運動を提案させていただきます。
栄養指導
ロコモ予防として、運動器機能を保つには5大栄養素である、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルを毎日3回の食事から摂ることが理想です。
生活のリズムが乱れると食事にも影響します。
運動不足や活動量が低下しても食欲低下から低栄養となるため、その際には食事の回数を増やすなどの工夫して少しずつ食べるようにしましょう。
特に、タンパク質、カルシウム、ビタミン類(D、B群)などが筋肉、骨には大切です。
運動後のプロテイン、BCAA(ロイシン)摂取なども有効です。
体重の適切なコントロールも大切
また、体重の適切なコントロールも大切です。
体重過多だと、脊椎、関節に負担がかかり運動できない可能性があります。
体重過少だと、低栄養、サルコペニアにつながる可能性があります。
予防
生涯自分の足で歩いて移動できることがロコモ予防の最終目標です。
腰痛、変形性膝関節症に対する筋力強化が症状の緩和に有用であることが知られ、骨粗鬆症に対する背筋訓練、踵上げをはじめとした多くの運動が骨強度の改善に役立つことが知られています。
さらに、片脚立ちなどのバランス訓練は転倒予防にも効果があり、運動器疾患や運動器機能低下には、やはり運動をすることが最も大切であると言えるでしょう。
最近では運動が認知症を予防することも報告されています。
ロコトレ
ロコモ予防には毎日の運動習慣とバランスの良い食生活が必要です。
毎日の生活の中で運動の要素を積極的にプラスしてみましょう。
- 階段を積極的に使う
- 一駅分歩いて通勤、買い物に行くなどしてみましょう。
運動
運動では、片脚立ち、スクワットが自宅で簡単、安全に行うことができ、おすすめです。
片脚立ち
転倒しないようにつかまるものがある場所で、床につかない程度に片足を1分あげます。
左右1分ずつ1日3回くらいやりましょう。
姿勢をまっすぐにして行いましょう。
つかまる量は自己調整してみましょう。
スクワット
肩幅よりやや広めに足を広げ、つま先は30度くらい開いて立ちます。
膝が爪先より前に出ないように、また膝が足の人差し指の方向を向くように注意してお尻を後ろに引くように体を沈めます。
大腿に力が入っていることを確認して5~6回を1日3セット目安で行いましょう。
自信がなければ机、椅子がある場所でやりましょう。
自分の体力に合わせて行いましょう
さらに自分の体力に合わせてヒールレイズ、フロントランジなども有効です。
ヒールレイズ
爪先立ち運動で10~20回を2、3セット目安で行いましょう。
バランスを崩しそうな場合には壁や机などに手をついて行いましょう。
フロントランジ
5~10回を2、3セット目安で行いましょう。
上体は胸を張って、良い姿勢を維持してください。
大きく踏み出しすぎてバランスを崩さないように注意しましょう。
継続が大切です
大切なのは、毎日少しずつでも継続することです。
無理せず自分のペースで行いましょう。
痛み、違和感などがあれば整形外科医師に相談しましょう。
当院では医師、リハビリ担当者から個人にあった運動の指導をさせていただきます。
気軽にご相談ください。
地域の自治体などの主催する体操教室、YouTubeなどでもロコモ体操は盛んです。
ロコモコーディネーターという資格(医療・介護系有資格者)もあります。
ロコモ普及員(浜松市)、シルバーリハビリ体操指導士(茨城県)、介護予防リーダー(愛知県)、ロコモ予防推進員(福岡県)などもロコトレ指導してくれます。
がんロコモについて
ペインクリニック医師、整形外科医師、ホスピス担当者など、多職種間で連携し、がん関連疼痛をコントロールしてなるべく移動機能を維持するように介入しています。
子どもロコモについて
子どもの運動器機能不全状態を放置すると、将来的にロコモに移行する可能性が高いため幼少期から介入する試みが最近されております。
子どもの腰痛、肩こり、雑巾掛けで転倒して前歯を折ってしまうなどの病態に対する取り組みが最近行われ始めています。
子どもロコモチェック5
- 両腕を真上に挙げられるか
- 手首を上下に動かせるか
- 床に踵をつけてしゃがめるか
- 前屈して床に指がつくか
- 5秒以上片脚立ちできるかなどをチェックします。
当院でできること
- フレイル、サルコペニア、ロコモ、子どもロコモのチェック
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの整形外科疾患の診断
- 投薬、注射、補装具を使用した整形外科疾患に対する保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション、運動指導
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
- 変形性頚椎症
- 頚椎椎間板ヘルニア
- ストレートネック(スマホ首)
- 頚椎捻挫(むち打ち損傷)、外傷性頚部症候群、寝違え
- 胸郭出口症候群
- 肘部管症候群
- テニス肘
- ゴルフ肘
- 野球肘
- 肘内障
- 肩腱板損傷・断裂
- 肩石灰沈着性腱板炎
- 肩関節周囲炎
(四十肩、五十肩) - 凍結肩(frozen shoulder)
・拘縮肩 - 頚肩腕症候群・肩こり
- ギックリ腰(急性腰痛症)
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 脊柱側弯症
- 胸腰椎圧迫骨折
- 腰椎分離症・分離すべり症
- ガングリオン
- ドケルバン病
- ばね指
- 母指CM関節症
- 指変形性関節症(へバーデン結節、ブシャール結節)
- 手根管症候群
- ギオン管症候群(ギヨン管症候群、尺骨神経管症候群)
- 突き指・マレット指
- 膝半月板損傷
- 膝靭帯損傷
- オスグット病
- 変形性膝関節症
- 足関節捻挫
- アキレス腱断裂
- 外反母趾
- 有痛性外脛骨
- モートン病(モートン神経腫)
- 足底腱膜炎
- Jones骨折(ジョーンズ骨折・第5中足骨近位骨幹部疲労骨折)
- 足部骨端症
- 扁平足(flat foot)・開張足
- 関節リウマチ
- 高尿酸血症と痛風発作
- ロコモティブシンドローム
- 骨粗鬆症
- グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)
- 大腿臼蓋インピンジメント症候群(FAI)
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