テニスボールをバックハンドで打つ動作、物をつかんで持ち上げる動作、タオルを絞る動作などを行う際に肘の外側から前腕にかけて痛みが出る病態です。
テニス愛好家に発症することが多いためテニス肘と呼ばれていますが、ゴルフなどのテニス以外のスポーツ、スポーツを行わない患者さんでも発症する場合があります。
原因
病態、原因については十分には解明されていません。
肘の外側(上腕骨外側上顆)には手関節の背屈、指の伸展に作用する筋・腱が集まって付着しています(起始)。
上腕骨外側上顆に負担がかかることで、筋・腱に微細な損傷、炎症が起こり、慢性的な疲労が蓄積し、症状が引き起こされると考えられています。
特に、短橈側手根伸筋という手関節を背屈するときに活躍する筋肉の起始部が原因になることが多いようです。
腕を酷使するスポーツ(テニス、バトミントン、ゴルフ、卓球など)
テニスでは、特にバックハンドストロークの影響が大きいようです。
ラケットの素材、ガットの強さ、衝撃吸収素材の使用なども影響するようです。
テニス以外でも、バトミントン、ゴルフ、卓球などで多く見られます。
最近ではスマホ操作を長時間することで症状が出る症例も増えています。
腕を酷使する仕事(運送業、料理人、大工など)
重量物を引っ張り上げる、重い鍋を振る、包丁・ハンマーの頻回使用など、腕や肘に負担がかかる作業を日常的に繰り返していることが原因となる場合もあります。
加齢、性別の影響
加齢による肘周囲の筋力低下、筋・腱の強度や質の低下(変性)が起こることで筋・腱に微細な損傷が起こると考えられています。
特に、中年以降に症状が出やすいです。
男女ともに症状は出ますが、中高年女性に多い印象です。
女性は筋力が弱いことや、家事で腕を使用する頻度が多いためと予想されています。
症状
安静時の疼痛はほとんどなく、手関節の背屈、前腕を内外にひねる(回内外)、指の伸展などの動作時に、肘の外側に痛みが起こります。
病状が進行すると、ペットボトル、空のコップを持つなどの軽い負担でも痛みが出たり、日常生活に支障をきたす場合があります。
診断
以下の疼痛誘発テストで痛みがでれば、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)と診断されます。
- Thomsenテスト
肘を伸展した状態で手関節を背屈し、その状態をキープするように負荷をかける。 - Chair テスト
ひじを伸ばしたまま手で椅子を持ち上げてもらう。 - 中指伸展テスト
肘を伸展した状態で中指を伸ばして、その状態をキープするように負荷をかける。
そのほか、下記を用いて診断します。
- レントゲン
肘関節周囲の骨折、石灰沈着など他の疾患を除外するためにチェックします。
上腕骨外側上顆に負担がかかっていると同部位に骨硬化が見られることもあります。 - エコー、MRI
上腕骨外側上顆付着部での筋・腱の状態(損傷、炎症、血流増加がないか)をチェックします。
また、腕橈関節の滑膜ひだの有無などもチェックします。
セルフチェック
物をつかんで持ち上げる、ドアノブを回す、タオルを絞る、キーボードを打つなどの動作時に肘外側の痛みが出るようならばテニス肘を疑い、整形外科医師に相談しましょう。
治療
安静
痛みを誘発するような動作は控え、何かスポーツをしている場合はお休みしましょう。
局所の安静を保つためにテニス肘用のエルボーバンドを使用するのも有効です。
物理療法
物理療法には、体外衝撃波(一部自費診療)、電気治療、超音波治療があります。
痛みが出始めた急性期はアイシング、長期になったら逆に温めることをお勧めします。
投薬
痛み止め、外用薬を使用します。
注射
ステロイド注射、ハイドロリリース、PRP(自費診療)、動脈注射治療(自費診療)があります。
リハビリテーション
即効性はありませんが、長期的には最も効果的という報告もあります。
ストレッチ
手関節を掌屈して肘外側が伸びていているのを感じながら肘を伸展します。
息を止めないように20秒程度ストレッチしましょう。
こまめにやることが大切です。
筋力強化
痛みが強くでない範囲で、手関節の曲げ伸ばし運動を行います。
チューブを使用したエクササイズがお勧めです。
当院ではリハビリテーション担当者が患者様にあった運動を提案させていただきます。
上記の保存的治療が無効な場合は手術も考えます。
手術
筋膜切開、切除、前進術、関節鏡視下手術など、症状に応じて行います。
予防
スポーツ、仕事で痛みが出る場合は、はなるべく負担を減らす目的でバンドを使用したり、こまめにストレッチをしましょう。
負荷を減らし、肘関節周囲の柔軟性を保つことが大切です。
当院でできること
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
- 投薬、注射、補装具を使用した保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
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