当院では集束型(BTL-6000 FoCus®)、拡散型(BTL-6000 TopLine®)のBTL社製の体外衝撃波治療器を導入しております。
体外衝撃波治療(ESWT)とは・・・

筋腱の炎症による痛み、石灰化を伴う病態、難治性骨折、難治性皮膚障害に対して衝撃波を皮膚の上から患部に照射する治療法です。
多くのスポーツ選手がこの衝撃波を治療、コンディショニングに取り入れており、メジャーリーガーの大谷選手も取り入れているようです。
(大谷翔平スペシャルインタビュー(他社製品))
当院では 集束型(BTL-6000 FoCus®)、拡散型(BTL-6000 TopLine®)のBTL社製の体外衝撃波治療器を導入しており、患者様の状態に合わせて治療を行なっております。
2025年7月現在、東京でのBTL社製体外衝撃波治療器導入施設
- 集束型(BTL-6000 FoCus®):東京で19施設
- 拡散型(BTL-6000 TopLine®):東京で27施設
体外衝撃波治療の歴史

衝撃波とは、落雷や爆発、音速の戦闘機など波源が音速を超えた時に発生する「圧力の波」で空気中、個体中を伝播し離れた場所のものを破壊する現象が知られています。(遠方で大きな爆発があった時に家の窓ガラスが割れたりする現象)
医療では、腎臓結石などに対して体外から衝撃波を与え集束させることで、切開などの外科手術をおこなわずに石を砕く結石破砕術「体外衝撃波治療ESWL」に利用されてきました。
その後、結石破砕術を行った患者さんの腸骨に骨形成が認められたことから整形外科領域では骨折後の偽関節治療に応用され、さらには、足底腱膜炎やテニス肘など腱付着部症の痛み、難治性腱症に対する有効性、石灰沈着性腱板炎の石灰吸収誘導が確認され、広く応用される様になりました。
また、衝撃波による照射部の血流増加に関する報告も散見され、心筋梗塞、難治性の皮膚潰瘍、勃起不全にも応用されています。
衝撃波による治療効果
①除痛効果
・衝撃波による自由神経終末部破壊・減少
→ P物質(痛覚伝達物質)の減少
②抗炎症効果
・衝撃波による機械的シグナル伝達(mechano transduction)
→ 細胞活性化、炎症性サイトカイン減少(MMPs、IL-6)
→ 慢性炎症の抑制
③組織修復効果
・衝撃波による組織微細損傷(micro injury) → 組織修復機転刺激
・衝撃波による機械的シグナル伝達(mechanotoransduction)
→ 細胞活性化、成長因子産生増加(VEGF、TGF-b)
→ コラーゲン合成促進、血管新生・血流改善
・衝撃波による組織血流増加、血管新生
④石灰吸収誘導

・石灰吸収メカニズムの詳細は現状では解明されていませんが、機会的シグナル伝達、組織微細損傷が関与している可能性があると思われます。
(右:左肩石灰沈着性腱板炎患者さんのレントゲン写真)
集束型(BTL-6000 FoCus®)の特徴
装置内で電気音響方式により発生させた衝撃波エネルギーをカップリングパッドで1点に集束させます。(デバイス先端を変更することで集束させる深度は調整可能です)
集束型は体表面から50mm程度が至適到達距離、エネルギー量は拡散型の20倍程度です。
集束型の場合、限局した病変、例えば肘腱付着部炎や骨障害治療において、患部のみにピンポイントで強力な衝撃波を加えることで高い効果を期待できます。
また、出力の上げ方も患者様の痛みの感じ方に応じて徐々に上げていくため、痛みに弱い方や小児の患者様へも使用しやすい特徴があります。
集束型最大の特徴が骨組織への治療効果です。
集束型は、その高いエネルギー出力で骨の細胞を刺激し、骨折部の骨癒合を促進する効果があります。
そのため、スポーツによる疲労骨折や偽関節(骨癒合が得られない)、早期の離断性骨軟骨炎(野球肘)などに良い適応があります。
また、加齢からかなる変形性関節症(膝関節・股関節・足関節・肩関節など)の際に生じるBML病変(骨髄浮腫)に対しても一定の効果が期待されています。
骨折がなかなか治らない/早く治したい、手術を勧められたけど今すぐできない/したくないといった場合に、集束型体外衝撃波治療が有効です。
ただし、難治性足底腱膜炎以外の疾患では保険診療の適応とならず自費診療となります。(集束型は主に自費診療で行うことが多いです。)
拡散型(BTL-6000 TopLine®)の特徴
筒の中で空気圧により加速された発射体がアプリケーター先端のバンパーに衝突することにより発生した衝撃波を利用します。
集束型とは異なり、エネルギーの焦点はアプリケーター先端に位置し、身体表面から体内に伝播しながら減衰します。
つまり、エネルギーはデバイス先端が最も高く、深くなるほど拡散しながら減弱していきます。
拡散型は体表面から20mm程度で減衰、エネルギー量は集束型の20分の1程度です。
拡散型は、皮膚からの深さが20mm程度の浅い部位、もしくは広範囲の場合に適しています。
患部周囲の筋肉や脂肪全体を振動させる効果も認められるため、慢性腰痛、MPS(筋・筋膜疼痛症候群)やタイトネス(筋肉の柔軟性不良)の改善、筋膜リリース効果、関節拘縮、皮下のセルライト対策に有用とされています。
スポーツ現場、リハビリテーションの領域では主として身体の筋肉構造を刺激・マッサージすることに使用されています。
拡散型衝撃波は基本的にはリハビリテーション(保険診療)の中で行っております。(リハビリテーションの一環として行なっております。)
当院では
- 集束型(BTL-6000 FoCus®)
- 拡散型(BTL-6000 TopLine®) 両方の体外衝撃波治療器を導入しており、筋腱付着部炎の発痛点、骨に対して集束型を使用することで除痛を図り、さらに、周辺の筋肉に対しては拡散型を使用することで症状の改善(tightnessの改善)を図ることが可能となりました。
長引く痛みに悩まれている方はお気軽にご相談ください。
お薬による治療や、注射などの治療とは異なる新しい治療法となります。
体外衝撃波による治療のポイント
照射時痛が非常に大切
体外衝撃波治療は痛みのある部位にあえて衝撃波を照射するため、治療中は痛みを伴います。
患部に衝撃波が照射されると必ず痛みが生じますが正常組織に同程度の衝撃波を照射しても弱い痛みを感じる程度です。
衝撃波治療では患部に正確に衝撃波が照射されている必要があり、治療効果を高めるためには『照射時痛』が非常に大切です。
治療者は患者様から痛みの具合を聞き取りながら照射部位を微調整(痛い部分を狙って衝撃波を打つ)します。
これを『バイオフィードバック』と呼びます。バイオフィードバックしながら照射を継続していると、痛みの原因である自由神経終末が破壊され、次第に痛みが和らいできます。
衝撃波はパワーが強いほど治療効果が高くなるため、照射時痛が緩和してきたら徐々にパワーを上げ、患者様が耐えられる痛みの上限までパワーを上げていきます。
つまり、治療中はずっと痛みを伴う治療なのです!!このように治療中は治療者と患者様とのコミュニケーションが治療の大切なポイントとなります。
照射時痛が大切なため局所麻酔は行いません。
もちろん、照射部位をあらかじめ限定するために照射前にエコーで照射部位、ポジション、深度を確認しておくことも大切です。
体外衝撃波とステロイド注射
整形外科では、手足の痛みを引き起こす腱炎や腱鞘炎、関節炎などの炎症疾患に対して、ステロイド注射を行うことがあります。
ステロイドの主な作用は、強力な抗炎症作用です。
ステロイド注射は注射直後から痛みが緩和される有効な治療法である一方、組織修復が進まないまま頻回に行なわれると、次第に腱や軟骨を傷めてしまう側面があります。(諸刃の剣的な治療)
また、糖尿病や免疫力の低下した方では、まれに細菌感染を引き起こすことがあったり、血糖のコントロール不良が起こる可能性があり注意が必要です。
ステロイド注射は、必要に応じて、なるべく少ない回数で行い、効果が一時的であれば他の治療を選択していくことが大切です。(他の治療候補として衝撃波治療、PRP、プロロセラピー、動注治療などがあります。)
体外衝撃波治療もステロイド注射もその場で痛みを和らげる点は同じですが、最も大きな違いは体外衝撃波が持つ組織修復力です。
ステロイド注射は使うほどに徐々に組織を傷めることがありますが、体外衝撃波は組織の血流増加と成長因子の誘導により、組織修復を促進します。
これはステロイドと真逆の効果と言え、その効果持続期間も体外衝撃波が長くなります。
また体外衝撃波はドーピングチェックがある方も使用することが可能なため、安心してスポーツに取り組めます。
またシーズン中でも治療可能であり、治療とコンディショニングの両面からメリットがあります。
当院での適応疾患
疾患によって保険適用、自費診療に分かれておりますので、あらかじめご確認・ご了承ください。
保険適用
- 難治性の足底腱膜炎
6ヶ月以上の保存療法(内服薬、湿布、インソールなど)を行っても痛みが改善しない方(紹介状など持参していただき、近医での治療歴が明らかであれば当院以外での保存的治療も期間に含めることが可能です。)
※治療期間終了後の再発による治療ご希望の場合は、治療後3ヶ月以上経過していれば保険適用となります。
保険適用にならないもの(自由診療)
足部
- 足底腱膜炎
- アキレス腱炎
- 付着部炎
- シンスプリント(疲労性骨膜障害)
肘
- 外側上顆炎(テニス肘)
- 内側上顆炎(ゴルフ肘)
- 野球肘(内側障害、後方障害、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)
手、肘
- 手根管症候群
- ばね指(腱鞘炎)靭帯損傷
- 肘部管症候群
肩
- 肩関節周囲炎
- 石灰沈着性腱板炎
- QLS症候群
- 胸郭出口症候群
腰部、股関節部
- 腰椎分離症
- 大転子疼痛症候群
- 石灰沈着
膝
- 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
- 膝蓋下脂肪体炎
- 鵞足炎
- 変形性膝関節症
- 靭帯損傷
- 離断性骨軟骨炎
- 無腐性骨壊死
- 骨髄浮腫(BML)
- オスグット病
- 断裂のない肉離れ
- 肉離れ後の筋肉のしこり
骨折
- 疲労骨折
- 偽関節
こり
肩こり、腰痛など筋肉のこり
副作用・リスク・有効率・注意点
以下のような副作用がありえますが、数時間〜数日で軽快していきます。
- 照射部位の痛み、発赤
- 腫脹
- 点状出血(血液サラサラの薬を使用中の方はあらかじめご相談下さい)
人によっては治療後から翌日にかけて痛みが出ることがあります。
体外衝撃波治療は従来の治療法では改善しなかった痛みに対して、60〜80%の高い効果が得られると報告されています。
当院においてもほぼ同程度の治療効果を実感しております。
体外衝撃波治療中は痛みが改善していきますが、そこで無理をしてしまうと再発を起こす事があります。
そのため、状態に応じた安静度を維持していただく事も治療効果を上げる上で重要となります。
患者様によっては経過が長く状態が良くない方がいらっしゃいます。
体外衝撃波でも効果が得られない場合、他の治療方法のご提案、適切な医療機関をご紹介にて対応させていただきます。
禁忌
以下のような治療との併用や部位、疾患には実施できませんのでご注意ください。
- 治療部位におけるステロイドの使用
- インプラント(ペースメーカーなどの機器、金属など)
- 骨端線部分
- ガスを含む臓器(肺、胃、腸管など)
- 心臓周辺・血液疾患
- 癌
- 頭部・頚部
- 脊椎周囲
こんな方におすすめの治療法です
- 手術せずに痛みをとりたい方
- つらい慢性的な痛みで日常生活がつらい方
- お薬や注射などで痛みの治療をしたが、なかなか良くならない方
PRP(多血小板血漿)療法と体外衝撃波治療は、患部の再生を促進する点で相性がいい治療法です
例えば、変形性膝関節症(膝の軟骨が減って痛い)の患者さんの中には、軟骨を下支えする骨内にまでダメージがある事があります(BML:Bone Marrow Lesion病変)。
この際にヒアルロン酸注射やPRP療法だけではどうしても効果が少ない場合、PRP療法の直前に患部に対して集束型衝撃波を照射する事で治療効果を高められる事があります。
この様に、当院ではPRP療法と体外衝撃波のハイブリット治療もおこなっています。
治療について

診察及びレントゲンやエコー、MRIなどの画像検査を行い適応疾患であると判断した場合、相談の上、集束型体外衝撃波治療を予定します。
治療スケジュールは対象疾患や年齢によって異なります。
- 通院1回目:診察と検査、治療予約(保険診療)
- 通院2回目:照射1回目(自費診療)
- 通院3回目:照射2回目(自費診療)
※自費診療での治療を行った場合は、治療の同日に保険診療(検査や薬の使用、注射など)を受けることはできません。
集束型治療
1回の治療は15分程度になります。
治療期間は1~2ヶ月を目安に3~6回程度行います。(1-2週ごとに1回)
施行後1ヶ月間以上あけ組織の修復を待ちます。その後の症状次第で治療再開する場合もあります。
悪化が見られた場合には途中で中止することもあります。
拡散型治療
1回の治療は3~5分程度で保険診療によるリハビリテーションの中で実施いたします。
当院で使用している衝撃波装置についての詳細は以下をご覧ください。
費用のご案内
保険適用(難治性足底腱膜炎)
1回 | 50,000円(週1回、計3回照射) ※窓口負担 50,000円×1-3割=5,000~15,000円 |
---|
自由診療
1回 | 9,900円(税込) |
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※治療終了後の経過観察期間の診察も自費となります。
※複数部位の治療をする場合は、それぞれに上記費用がかかります。
※自費の衝撃波治療と保険診療は同日に行えません。
文責:新中野整形・リハビリテーションクリニック院長 岡部 高弘
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