オスグット・シュラッター病は、発育期の膝に発生する障害で、膝蓋腱の牽引力による脛骨粗面(脛骨結節)の剥離であると報告され、日常診療でもしばしば遭遇する疾患です。
お皿(膝蓋骨)の下の腱によって、スネ(脛骨)の近位が引っ張られて障害が起こった病態です。
成長期に起こりやすいオスグット病
成長期にスポーツ活動をする人が増加し、オスグット病の発症頻度も増えています。
10~15歳の成長期に多く、キックやジャンプをするスポーツで症状が出やすいです。
特にサッカー、バスケットボールを行う小中学生に多く、認知度が上がってきています。
成長期の一過性の病態であることが多く、成長が終了すると、ほとんどは治癒します。
原因
成長期に膝関節周囲の骨(大腿骨遠位、脛骨近位)が縦方向に伸びることで身長が伸びます。
大腿骨と脛骨の長軸方向への成長は約70%が膝関節部で起こるといわれています。
骨が伸びる主な部分は、成長軟骨・成長線・骨端線と呼ばれ、柔らかい軟骨で構成されており、成長に伴ってしっかりした硬い骨に置き換わります。
このように、硬い骨に置き換わることを、骨端線の閉鎖といいます。
発育急進期は男子で13歳、女子で11歳前後、脛骨結節の骨端線閉鎖時期は18歳頃といわれています。
言い換えると、成長軟骨部が骨に置き換わっていない成長期の骨では、力学的に弱い部分が存在し、剥離、骨端線損傷などが起こりやすい状態ともいえます。
過剰な負担がかかることが原因
また、この時期は、骨の成長スピードに周囲の筋・腱の成長スピードが追いつかずにバランスが悪く、体の柔軟性も低下しやすい状況のために筋・腱の付着部に負担がかかりやすい時期です。
キック、ジャンプなど膝を伸ばす動作に注目してみると、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)は膝蓋骨を経由して脛骨近位の脛骨結節に膝蓋腱としてつき、膝を伸展させる力として機能しています。
キック、ジャンプなどを繰り返すことで脛骨結節の成長軟骨に過剰な負担がかかり、脛骨結節に剥離、分離が起こることがオスグット病の主な病態です。
膝周囲の柔軟性が低下している状態での膝の屈曲でも同様に脛骨結節には負担がかかってしまいます。
症状
運動時に脛骨結節部の痛みを自覚し、同部位の腫れ、発赤、熱感が出現します。
運動を休み、安静にすると痛みが緩和し、再開すると痛みが再燃します。
圧迫による痛みが出ることも
また、脛骨結節部が徐々に突出し、出っ張ります。
圧迫による痛みが出ることも多いです。
成長期を過ぎると症状は落ち着きますが、脛骨結節の突出は残存する場合があります。
診断
- 問診・診察
脛骨結節周囲の隆起、圧痛、運動時の痛みからある程度診断可能です。 伏臥位(うつぶせ)での尻上がりテスト(大腿四頭筋の柔軟性)などもチェックします。 - レントゲン
脛骨結節の状態、骨端核の閉鎖状況をチェックします。 - エコー
脛骨結節の状態、血流増加、運動時の安定性などをチェックします。 - CT、MRI
精査が必要な場合、オスグット病以外が疑われる場合にチェックします。
セルフチェック
- 脛骨結節部のでっぱり、痛み、腫れ、発赤があり、正座した時にあたって痛む
- キック、ジャンプ動作など、膝を伸展するように力を入れると痛む
このような症状があれば整形外科医師に相談をしてみることをお薦めします。
膝前面に痛みが出る病態
膝前面に痛みが出る病態はオスグット病以外にも色々あり、anterior knee pain syndromeと呼ばれます。
代表的なものは、
- 膝蓋骨下端の疼痛(Sinding-Larsen-Johansson病)
- 膝蓋骨上端の疼痛(大腿四頭筋付着部炎)
- 膝蓋腱周囲炎(ジャンパー膝)
- 膝蓋大腿不安定症
- 腸脛靭帯炎(ランナー膝)
- 鵞足炎
などがあります。
心配であれば整形外科医師に相談してみましょう。
治療
保存的治療
成長期の一過性の病態であることがほとんどで、成長が終了すると、多くは治癒します。
したがって、この時期は痛みが強ければしっかり安静期間をとることが大切です。
痛みを我慢してスポーツを継続してしまうことが多く、症状を悪化させてしまうことが多いです。
周囲の大人が異常を察知して、安静期間をとることが大切です。
リハビリテーション
大腿四頭筋(大腿前面)、ハムストリングス(大腿後面)のストレッチング、体幹トレーニングを含めた筋力強化、協調性の獲得を目標に行います。
物理療法
運動後には脛骨結節周囲のアイシングなどを行いましょう。
衝撃波による治療も注目されています。
当院では圧力波という衝撃波の一種をリハビリテーションに組み込んで使用しています。
投薬
痛みが強い時期には内服薬、外用薬を使用します。
痛みが緩和すればスポーツは可能です。
発症後半年くらいまではスポーツ時に痛みが増強しやすいので、オスグットバンドを使用して局所の負担を減らすことも有効です。
スポーツ前後にはストレッチを行い、スポーツ後にはアイシングを行いましょう。
保存的治療の目標は、変形を残存させずに治癒させることです。
外科的治療
稀ではありますが、疼痛状況がひどく、通常の歩行などの日常生活にも支障が起こるような場合には、骨端線癒合前にドリリング(小さな穴をあけ、軟骨組織を再生させる方法)が行われる場合もあります。
また、骨端線閉鎖後に骨小骨が残存し、痛みのためにスポーツ活動に支障がある場合には骨小骨を摘出し、脛骨粗面の骨隆起部を切除し、平坦にする手術を考慮します。
脛骨結節の隆起(でっぱり)に対する整容目的での手術はお薦めされません。
予防
痛みがあれば、まずはスポーツ活動をお休みして安静期間を取ることが大切です。
脛骨結節の変形が起こらないように保存的治療を行いたいものです。
当院でできること
- 身体所見、レントゲン、エコー検査からの診断
- 投薬、注射、補装具(オスグットバンド)を使用した保存的治療
- 専門スタッフによるリハビリテーション
- 手術術後の回復リハビリテーション
診断から治療、その後のリハビリまで患者さんの症状に合わせて対応しておりますので、ご相談下さい。
当院でできないこと
当院では、MRIでの精査、手術加療はできません。
必要であれば専門外来に紹介させていただきます。
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